bcam-higurashi’s blog

当サイトは大手経済新聞社OBを中心にファンド・マネージャー、チャーチスト、外国事情に詳しい大学教授らが結集し個人を対象に完全中立の立場で投資の学習講座を提供するものです。講師はそれぞれの専門分野について質の高い講座を丁寧に提供することで講座の「ブティック」を構成します。

コロナ禍があぶり出す経済構造の変質:生産重視から生活実態の向上に資する所得の充実へ

日本経済はこれまでGDP成長率で示される生産活動の増大が重視されてきましたが、近年、生活に直結する所得のレベルにこそ注目すべきという声が強まっています。コロナ禍によってこの傾向がより鮮明になっています。

 国内での生産活動の大きさを示すのが国内総生産Gross Domestic Product、GDP)、海外での所得も含めた日本国全体の所得を示すのが国民総所得Gross National Income、GNI)です。下の図は1994年1-3月期から直近の2020年1-3月期までのGDPGNI(いずれも季節調整、年率)の推移を示すグラフです。

 

(図1) 国内総生産GDP)と国内総取得(GNI)の推移(四半期・季節調整、1994 / I 〜 2020 / I

国内総生産(GDP)と国内総取得(GNI)の推移(四半期・季節調整、1994 : I 〜 2020 : I

 

 各指標名の枠内に期初と直近の値を記しています。GNIはGDP継続的に上回っており、かつ、その差が近年、着実に大きくなっています。このGNIとGDPの差は直近では20兆円GDP4%に相当します。この差は主に日本の企業が海外に直接投資をした結果得られる所得で、国際収支統計では「第1次所得収支」の項目で捉えられます。

 下図は海外との経済活動に関するやり取りを総合的にまとめた経常収支とその主要な構成項目である貿易収支と第1次所得収支について過去5年間の推移を示したグラフです。

(図2)経常収支と主要構成項目の推移(月次・季節調整、2015年1月〜2020年4月)

経常収支と主要構成項目の推移(月次・季節調整、2015年1月〜2020年4月)

 直近の2020年4月にコロナ禍の影響がはっきりと表れています。貿易収支が輸出の激減によって1兆円を超す大幅な赤字となったことで経常収支が直前の2兆円台の黒字から2千億円台まで減っています

一方で第1次所得収支は1兆5千億円から2兆円の間で推移しており、これが年間約20兆円のGNIとGDPの差、すなわち、国内での生産活動による価値と日本全体の所得の差になっています。第1次所得収支はこれまでの海外投資全ての蓄積によってもたらされるもので、今後も安定的に推移するものと見られます。
国内の生産活動は今後、少子高齢化の下で減少圧力が強まる中で、コロナ禍が日本経済の生産活動から所得への重点シフトを浮き彫りにする役割をした形です。


講師:日暮昭
日本経済新聞社で30年に渡りデータベースに基づく各種の分析システムや株価指数の開発に従事。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。

*当講座は個人向け投資学習サイト、「資産運用のブティック街」で公開する講座の一環です。詳しくは当サイトをご参照ください。

(*)ご注意
当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。当講座を基に行った投資の結果について筆者とインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。

TwiiterInstagram

のフォローお待ちしております。

 

是非、何かありましたらコメント等お願いいたします。